「愛の絆の結び方」

 

 

　旧約聖書の中でも、よく知られている物語と言えば、ヨセフの物語でしょう。

きょう、お読みいただいた３７章で登場した、イスラエルの１２人の息子たちの一人ヨセフ。

後に神からイスラエルという名を頂いた彼らの父ヤコブ。この人は自分の父を騙して兄の長男としての権利を奪い取り、命を狙われて家出した男です。逃げ込んだ親戚の家でその家の娘たちと結婚し、ヤコブは１２人の息子たちを与えられました。

　ヨセフはヤコブが最も愛した妻ラケルの息子です。ラケルはヨセフが小さいうち、難産で弟を生んで亡くなりました。妻に先立たれたヤコブは、ヨセフを溺愛しました。

ヨセフは、年の離れた兄たちが羊飼いとして働く場と　父との間の使い走りをする子供でした。父はヨセフに兄たちの様子を聞き、忖度を知らないヨセフは、兄たちの話をぜんぶ、父に言ってしまう。兄たちがこの子を父のスパイだと思うのも仕方ありません。

ヨセフがいつも着ていた、美しい晴れ着。ヤコブがヨセフにだけ作った晴れ着は長袖で、裾も長く…働くには向かない服です。この時代、服装はその人の立場や権威を現します。

父はあの子に立派な服を着せた。あの子が族長ヤコブの後継ぎだと言うか。

兄たちの不満はつのります。

３７章５-11節、ヨセフは「夢見る人」でもありました。夢は人間に語り掛ける、神の預言のかたちと考えられていました。ヨセフは夢で「兄たちの麦束が自分の麦束に向ってひれ伏した」や「太陽と月と11の星が自分を拝んだ」を見たと言い、さらに嫌われます。

ヨセフは父にばかりか、神からも特別扱いされているのか？

兄たちがきょうの箇所で「あれの夢がどうなるか見てやろう」と言ったのは、この夢の事です。

自分たちが拝みひれ伏すという、兄たちは夢のお告げが現実になるのを阻止しようとしたのです。

服をはぎ取られ身分も立場も何もないヨセフ。彼を捕まえた兄たちも、一枚岩ではありません。殺してしまおう、いや、命は取るな。売って儲けよう。意見はバラバラです。でも結局、

兄たちが話し合っているうちに、ヨセフは外国人に拾われ、売られてしまったのです。

居なくなった弟の記憶を抱えた兄たち。野原で命を落としたと思われる息子を思う父。

彼らは共に、長い時を過ごすことになります。

ヤコブの家族は、本当はどうすれば良かったのか。家族と　親子、きょうだい、友人や同僚、親しい人々と　教会で町で出会う人々と、最高の関係を保つには　私たちはどうしたら良いのか。

コロサイの信徒への手紙が３章１２節「あなたがたは神に選ばれ、聖なる者とされ」

旧約のアブラハムやヤコブは神と出会い、語り合っていますが、私たちも髪に選ばれたのでしょうか？ヤコブの家と私たちは違う。私たちはイスラエルではなく日本人。でも今、私たちは自分たちの言葉で読める聖書を与えられ、自分たちの土地で自分の言葉で礼拝できる環境があります。私たちは福音を聞ける環境に置かれているのです。福音に触れる機会がある。それは神に愛され選び出されたと考えてよい。でも12節から17節で勧められる内容は、かなり高いハードルを感じさせられます。「身に付けなさい」「～なさい」と教えられても、すぐできることではない。

誰にとっても、困難です。

もしヨセフの兄たちに「憐れみの心、慈愛、謙遜、柔和、寛容」があったなら。

まだ周囲の人の心を思いやることのできない小さな弟に、話し方を教え、父の言いつけに従って一人でやって来たことを褒め、やさしく接していたら、ヨセフが父に話す兄たちの話は告げ口にはならなかったでしょう。また父ヤコブも、兄たちについて話すヨセフに兄たちの働く苦労を思って言い聞かせていたら。まずヨセフが、父をも兄たちをも尊敬して、穏やかに優しく話す子だったなら、兄たちも父もヨセフも、互いにストレスを溜めることは無かったでしょう。

｢互いに忍び合い、責めるべきことがあっても、赦し合いなさい」

相手を思いやろうとしても、私たちはすべての人の心がわかるわけではありません。

自分の心の声を押さえつけ「赦しあわなくては！」と頑張ると、かえってストレスが溜まります。

この手紙は手本として「主が赦してくださったように」と。私たちの主であり救い主であるイエス・キリストを見習え、と。そんなの、無理ですよ。私たちがイエス様になれるわけがない。

私たちは誰も、自分自身のためにさえも、十字架を負えない。自分の力で罪を贖うことのできない者です。その私たちのために、主イエスの十字架と復活があるのです。

私たちには本当に「赦す」力なんて、無い。　だから、「愛を身に付けなさい」

「神は愛です」と聖書に書かれた、神様の力を、身に着ける必要があるのです。

「憐れみの心、慈愛、謙遜、柔和、寛容」を真実、持つことのできない私たちだから、

できません、助けて下さい、と、愛である神に願うしかない。

愛せない。赦せない自分を認めないなら、私たちは愛すべき小さな弟に不満をぶつけてしまった兄たち　ヤコブの息子たちと同じ苦しみの中に留まることになるのです。

　主イエスが送って下さった聖霊によって、私たちは愛を身に着ける練習をさせて頂くのです。すると私たちの波立つ心はやがて収まってゆき、平安な瞬間を経験するようになります。

それが「キリストの平和」です。　その平和に身も心も満たされ 支配されてゆく。

そして私たちは神にも人にも、感謝する想いを与えられるのです。

　神が私たちに注いで下さる愛に気付くために、与えられているのが聖書であり、賛美であり、礼拝です。　「キリストの言葉があなた方の内に豊かに宿るようにしなさい」

詩編と賛歌と霊的な歌。一人 心の中で歌う賛美の内にも、礼拝で声を合わる賛美の内にも、

主は共に居て私たちの心と想いを受け止めて下さいます。

創世記50章までの最後、ヨセフは和解した兄たちと共に父ヤコブを看取り、彼自身、

父の家のすべてを主に在って祝福します。このバラバラだった家族の絆が、主なる神の導きによって回復し、結び直されるまで。そしてヨセフが波乱万丈の生涯を終えて亡くなるまでの物語を通して、主はご自身の愛と導きを示し教えて下さいます。

「愛はすべてを完成させる絆です」

お祈りいたします。