「見えるようになる」

 

20240225　「見えるようになる」

列王記下６章８-１８節、ヨハネによる福音書９章２４-４１節　　　　　　　　中村文子

　生れつき目の見えない彼は、物乞いで生活し人にも知られていました。イエスが彼の前を通った時も、彼は道端にいました。彼の前で、弟子たちはイエスに聞きました。

｢なぜ、この人は生れつき目が見えないのですか？本人または彼の両親が罪人だから？｣

イエスはたぶん、彼にも聞かせるつもりで答えました。それから地面に唾を吐き、土を捏ね彼の目に塗りました。彼は自分に泥を塗る人に怒りませんでした。イエスが｢シロアム―『遣わされた者』の意味―の池に行って洗いなさい｣と言うままに、池で顔を洗いました。

彼の耳にイエスの弟子への答えが残っていました。「(この人の目が見えないのは」本人や親が罪を犯したからではなく、神の業がこの人に現れるためです。」｢わたしをお遣わしになった方の業を、まだ日のあるうちに行わねばならない。…わたしは…世の光である。｣

シロアムの池への道は、見えなくてもよく知っていました。帰り道、彼は何度も歩いたその道を、生まれて初めて　自分の目で見たのです。

　返って来た彼に驚く近所の人たち。皆を彼は声で知っていました。大騒ぎ。彼が

｢もと物乞いの盲人だった人　本人で、今は見えるようになった｣と納得すると、今度は皆、

｢誰が彼を見えるようにしたか｣知りたがりました。｢それはイエスという人｣と答えた彼も、

イエスがどこにいるのかは　｢知りません｣。　あの時は、まだ、見えなかったですし。

　ユダヤ人たちはこの件を、ファリサイ派に持ち込みました。ファリサイ派学者たちは、安息日に『癒された』人を連れて来られ、もう一度、見えるようになった経緯を聞きました。そして、｢お前はあの人をどう思うか｣と聞きました。すると彼は｢あの方は預言者です｣と答えました。

それはユダヤ人たちが『イエスをメシアであると公に言い表す者がいれば、会堂から追放する』と決めている、あの人のことです！彼の両親は息子の目が見えることを喜ぶ前に、ユダヤ人たちに　自分たちもイエスの仲間だと思われることを恐れ、何も答えません。

なにしろ、この日は安息日。律法で働くことを禁じられた日。その日に癒しの業を行うとは！｢あのイエスは罪人だ。奇跡を起こせるはずがない｣と、ユダヤ人たちはもう一度、

彼に詰め寄ります。

でも何度も聞かれ、イエスについて何度も思い出すうち、彼の中で　

｢目の見えなかったわたしが今は見える｣という事実が

どんどん、大きな意味を持つようになりました。

これまで、自分の盲目は罪の結果だ、と、彼も彼の両親も裁かれ神殿にも行けずにいたのです。

その自分にイエスは、生れつき目が見えなかったのは｢神の業が現れるため｣だと言い、目を開けて下さった。

あの人は神から遣わされた方だ。彼は確信しました。ですから、ユダヤ人たちに答えたのです。｢なぜまた、聞こうとなさるのですか。あなたがた　も　あの方の弟子になりたいのですか｣　　　　シロアムの池に向かった時、彼が歩き始めたイエスの言葉に従う歩みは、

とうとう彼に　自分は　イエスという人の弟子だ　という　信仰を与えたのです。

　列王記下６章、あのユダヤ人たちのように、見ようとしない人たち　が　います。

アラム王は自分の軍への信頼を失いそうでした。国外に　軍の外への機密のはずの軍議の内容が、筒抜け・ダダ洩れ。作戦は失敗続き。誰が敵のイスラエル王に知らせているのか。

王に答えた家臣は調査結果を報告しました。アラム国内の情報漏洩は無い。

イスラエル王の情報源は、アラム・イスラエル両国の軍事関係者でなく、預言者エリシャだ。

アラム王はただちに預言者エリシャの預言者の家を包囲し、丸腰の民間人に全軍を向けました。召使いが怖がるのも当然です。

エリシャは主なる神に｢彼の目を開いて下さい｣と願いました。すると、召使いにも神の軍勢が。火の馬と戦車が　山に満ちているのが見えたのです。神様が味方でいて下さる！

アラム軍の方こそ　神の軍勢の前で 弱小じゃないか！

エリシャは主に、アラム軍の目を眩ますことを願いました。そして、自分を捕らえに来た軍を

首都サマリアに案内し、イスラエル軍の手の中に導き入れました。アラム軍は戦う前に敗北決定。でもエリシャは、アラムの軍勢を滅ぼしませんでした。戦闘ではなくイスラエル王の大宴会で　　お・も・て・な・し　　したのです。

アラム軍に、もう戦意はありません。彼らは粛々と帰国し、もう攻めては来ませんでした。

　イエスは彼が追放されたと知って会いに行かれました。｢あなたは人の子を信じるか｣　

人の子は救い主を表す称号だと、彼も知っています。彼はイエスの声を覚えていたでしょうか。

彼は｢主よ、…その方を信じたいのですが。｣と言い、

イエスは｢あなたは、もうその人を見ている。あなたと話しているのが、その人だ。｣

と答えました。彼はどれほど嬉しかったでしょう。　　　　｢主よ、信じます｣

ユダヤ人たちは、目の見えない人が見えるようになった奇跡よりも、

律法に、安息日にこだわり続けました。

彼らの質問は、目が見えるようになった人の信仰を確信に変える役に立ちましたが、

イエスも、イエスが行った神の業も、認められませんでした。

アラム王は自信がありました。作戦の失敗は部下のせい。または敵のスパイ。

預言者エリシャがスパイなら、エリシャをなんとかすればいい。アラム王の考えは狭すぎました。エリシャに情報を与えていたのは誰なのか。エリシャは天にいます神の、イスラエルもアラムも、全世界を御手の内に治めておられる神の、預言者だということを、考えなかった。

神に、目が開かれていなかったのです。

イエスは言われました。｢見えなかったのであれば、罪はなかったであろう。しかし、今、『見える』とあなたたちは言っている。だから、あなたたちの罪は残る。｣

全てを見て居られる方は、神　お一人なのです。

自分は知っている、という前に、エリシャのように

｢目を開いて見えるようにして下さい｣と祈りましょう。

そして、告白しましょう。｢主よ、信じます｣と。

主は私たち一人一人を守り、共に居て助けて下さいます。

お祈りいたします。