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「王の入城」

 

20240317 「王の入城」

ゼカリヤ書9章9-10節、ヨハネによる福音書12章12-16節       中村文子

 お読みいただいたゼカリヤ書は、イエスが子ロバに乗ってエルサレムに入城されたことの預言と考えられている箇所です。

シオンとはエルサレムのもう一つの名前。ちなみにエルサレムに入ることを「入城」と言うのは、

町は1つの城として、城壁に囲まれた造りになっているからです。日本では山や川などの地形を生かして町や城の守りにしましたが、エルサレムは平地の町です。後のヨーロッパでもそうですが、城壁で囲み、その城壁の出入口の門の上に見張りを置き、住民を外敵から守っていたのです。

町に敵が攻めてくる時、また、王様が戦いに勝って凱旋して来る時、城壁の上の見張りが町の中に向けて大声で知らせる=呼ばわります。

「エルサレムよ町をあげて喜び踊れ。王がやってくる。帰って来る」  王は宣言します。

「わたしはエフライムから戦車を エルサレムから軍馬を絶つ。 戦いの弓は絶たれ 諸国の民に平和が告げられる。」 王は、全世界、すべてを支配する。

「彼の支配は海から海へ 大河から地の果てにまで及ぶ。」

武器を「断つ」。そう宣言できるのは、もう軍馬も武器も必要ないからです。平和のために武器を持ってはいけない。原水爆を禁、と呼びかけるのとは違う。

世の中に王の領土でない所は もう、ありません。

ですから、王は勇ましい軍馬ではなく、母ロバに連れられた子ロバに乗って来るのです。

 ゼカリヤ書9章の1節~8節、イスラエルの全部族は敵に狙われていました。敵はこの戦いのために砦を築き、「塵や野の土くれのように」多くの軍資金を集めました。

しかし、主なる神は彼ら財産を「海に投げ込」み、「町を焼き尽く」し、滅ぼしました。

主なる神が見守っていて下さる。もう敵はいない。完全に勝利しました。

この勝利の結果、王は神の都エルサレムに入城するのです。

 王は、自分を待っていた民の一人一人に、捕らわれていた人々を解き放つ、と宣言します。

「捕らわれ人を水のない穴から解き放つ」これは、創世記に書かれた故事です。

イスラエルの息子たち後に12部族の族長となる彼らの中で争いがあり、ヨセフは兄たちに

捕らえられ、「水のない穴」=枯れ井戸に投げ込まれました。ヨセフは奴隷として売られ

エジプトに連れて行かれ、殺されずに済みました。兄たちは殺した動物の血をヨセフの服につけて父イスラエルに見せ、イスラエルの家ではそれ以来、ヨセフは死んだと考えられました。

ゼカリヤはペルシアの捕囚の民の中に立てられた預言者。

「捕らわれ人」という言葉を、預言を聞くユダヤ人たちは、自分のこととして聞きます。

捕われ人よ、あなたたちは解放される。王が来て、あなたたちにも勝利が与えられる。

散らされ、自分の国から引き離された者たちよ、砦に帰れ。

王なる主は、平和を宣言される。あなたたちも、主と共に勝利を、平和を、宣言せよ。

 イエスがエルサレムに入城したのは、過越しの祭が行われる時期でした。

「ホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように、イスラエルの王に。」

勝利した王を迎える民として人々はイエスを迎えました。

彼らが持ち振ったなつめやしの枝は、荒野の民にはオアシスの目印。命を表します。

この群衆は、祭に来ていた人々です。彼らが迎えに出たのは、イエスと一緒に来た人々の話を聞いたからです。「この、ナザレのイエスは死んだ人を墓から呼び出した」

「ベタニア村のラザロという人は、死んで葬られたのに、生き返った。それはイエスの奇跡だ」

奇蹟は 神の業、神が働かれた印として知られていました。

イスラエルの王、油注がれた方、メシアが来られた!人々は歓喜しました。

 彼らが集まってくると、イエスは子ロバに乗ってやって来ました。平和の王だ!

ゼカリヤが預言した通りだ。この方の支配は全地に及ぶのだ。我々も異邦人の支配から解放される時が来た!この方が我々を死の穴から救い出して下さる!

彼らが叫んだホサナ、とは「今、救って下さい」とは「栄光あれ」という意味です。

 このエルサレム入城の7日後、イエスは十字架に架かりました。

ピラトがイエスかバラバか、どちらを十字架につけるのか、と問うた人々の中には、

イエスのエルサレム入城を迎えた人々もいたのです。

王として、期待したイエスは捕らえられてしまった。希望をもって熱狂しイエスを迎えた群衆は、ロバの子から降りた人物が捕らえられ、鞭打たれたのを見ました。

期待は裏切られた。イエスは主なる神の名を騙るニセモノに違いない。

イエスを「十字架につけよ!」 

彼らはイエスが罰せられ、神に呪われ、敗北した、と考えました。

しかし、十字架こそ、イエスの勝利。イエスはまさに、「世の罪を取り除く神の小羊」として犠牲の血を流し、全人類の罪の力は完全に滅ぼされ、命の契約が成立しました。

「あなたと結んだ契約の血のゆえにわたしはあなたの捕らわれ人を水のない穴から解き放つ。」

そして主なる神は、「希望を抱く捕らわれ人よ、砦に帰れ。」と呼びかけて下さいました。

イエスが復活し、勝利した姿を弟子たちに見せた時、はじめて、

弟子たちはあのエルサレム入城で人々が叫んだゼカリヤの預言が成就したことを知ったのです。

「今日もまた、わたしは告げる。わたしは二倍にしてあなたに報いる。」 

私たちはイエスを信じ、その十字架によって救われ、イエスの復活と共に神の子の命に目覚めさせて頂いた。二倍の報いを受けたのです。

イエスが何のために子ロバに乗って来られたか。王は何のため、誰のため勝利を宣言されたのか。

私たちを死の穴から解放し、神の子の命に目覚めさせるため。

私たちに主イエスと共に勝利を宣言させるため。

全地は全人類は十字架によって死から解き放たれ、完全な神の支配のもとに戻されました。

私たちは万軍の主 と呼ばれる神の砦に帰り、イエスと共に勝利宣言をするのです。

「わたしはエフライムから戦車をエルサレムから軍馬を絶つ。戦いの弓は絶たれ

諸国の民に平和が告げられる。彼の支配は海から海へ 大河から地の果てにまで及ぶ。」

お祈りいたします。